第30回来日公演
「ハムレット」
「小が大を超える」これが ITCLの神髄といえる。七人のキャストの早業、想像力を呼覚ます簡素な舞台造り、役者の生演奏、作品のテーマやコンテンツを象徴的に示す独特な身体表現などが、言葉そのものの化身となってビジュアルでフィジカルな舞台を生み出す。
『マクベス』『夏の夜の夢』『リア王』『じゃじゃ馬馴らし』などで世界中のシェイクスピアファンを魅了したポール・ステッビングズが2004年のテヘラン国際演劇祭にて最優秀賞に輝いた『ハムレット』をリバイバルさせる。今年も英国を始め、全世界30カ国で上演される
ハムレット授賞暦
2004年国際演劇祭にて最優秀賞
シンガポール政府芸術功績賞
インターナショナル・シアター
カンパニー・ロンドン
(ITCL)
ロンドンを拠点に、世界で公演ツアーを行い、独特な演出で世界中の観客を魅了しているインターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドン(以下ITCL)。今年、5月に30回目の来日公演が実現します。
今回は、シェイクスピア作品の中でも人気・知名度の高い「ハムレット」を原語上演。長年に渡る海外での英国文学作品普及に追力した功績に対して、英国王室より勲章を受賞したポール・ステッピングが脚本と演出を務めます。
日本で行われる数少ない原語公演(英語)。日本にいながら、一流の海外演劇を鑑賞できる貴重な機会。原語上演だからこそ味わえる、シェイクスピアの持つ言葉のリズムや雰囲気をご堪能ください。
「ハムレット」の暗喩と現代性 (ポール・ステッビングズ)
ローレンスオリビエが1948年Hamlet映画の序文でも述べている様に、既存のHamlet演出の多くが “決心が出来ない”男の悲劇として『ハムレット』を創りあげてきた。監督ポールステビングズはこれにあえて挑戦する。 シェイクスピアは劇詩人であり、リアリストでもロマンチストでもない。ポールは王子を“決心が出来ない”男というよりも、倫理的ジレンマの袋小路に入り込み、身動きがとれなくなった男と解釈する。ハムレトはあくまで真実の追求に終止する。物語はいわば探偵ものとしても完璧だ。
『ハムレット』は数多の戯曲の中でも最も人を惹きつける作品かもしれない。 その中心となる暗喩は“演じる”ということのパラドックスである。劇中劇がクローディアスの罪を暴き、ハムレットの偽りの“狂気”が人間の真実をさらけ出し、この芝居そのものが”人間の迷える魂”を写しだす鏡となっている。
暴露された真実に対峙するプリンス。復讐のための殺人は許されるのか?デンマークを立ち直らせるには敵を殺すことで解決するのか? 敵を殺しても、失われた人間性への信頼は回復だきないのではないか?というジレンマが彼を苛む。復讐とは何か?“目には目を”以来、人間に課せられてきた普遍的で永遠な問いかけでもある。
福田恒存 “ホレイショーは沈黙する”
…ハムレットはめまぐるしく、ときには軽率に行動しながら、意識の世界では一歩 も動かず、じっと自己の宿命が完成されるのを待っている。かれは完全に無垢であるが ゆえに、そして完全に意識的であるがゆえに、計量を事とする用心深い個性の手が、 自己の宿命を造りあげるものでないことを知っている。ひとの眼には自己分裂的 とさえ見える偶然にまかせた自由闊達な運動が、宿命の必然に通じるものであることを 知っている。かうして動かずに待つ意識を中心に、力一杯うごきまわること、それが 演戯なのである。
『ハムレットとラスコーリニコフ』のなかで小林秀雄はかういっている。「ハムレットは、出来る事なら、純粋な、意識の権化として生きたいのである。」
彼は、寛大で鷹揚であり、復讐を遂行する勇気も工夫もかけていない。…
ハムレットの行為は、衝動的に、機械的に、殆ど自己防衛の様な形でしか 行なわれない。それに比べると、彼の独白の方が、よほど自発的な力強い 行為にさへ思われる。ところでハムレットは結局、不様な形でではあるが、 復讐を遂げる。何が彼を復讐に追いやったのか。止むに止まれぬ正義感でも 怒りでもない。さういふものこそ、獨白によって、彼が故意にかき立てる 必用のあるものだ。何の因果で、彼は芝居をしなければならぬか。
ハムレットにはわからない。ここにハムレットの不透明性がある。という事を おそらくシェイクスピアはよく知っていた。
ハムレットのやうな精神を前にしては、私たちはホレイショーのやうに沈黙するのが一番 いい。ホレイショーはハムレットの生きかたを信じているがゆえに、ひことことも 忠告しない。かれの役目はただやさしく相槌を打つだけだ。そして、ハムレットが かれ自身の宿命を完成するのを、じっと見まもっているだけだ。ホレイショーの信頼が 揺らぐかに見えるのはただ一度だけ、最後の決闘を前にして、ハムレットが不吉な予感 を物語るときである。ホレイショーは、はじめて自分の意見をいふ。「お気がすすまぬなら 無理をなさらぬはうが。すぐ奥へまいって、御気分のわるいよしを申し上げ、お出まし をおとめしてきませう。」
いや、もう一度、ホレイショーがハムレットの行動を制肘することがある。亡霊を追って行かうとするハムレットを、ホレイショーは押しとどめる。だがホレイショーはつねにゆづる。自分の沈黙は、おそらく親友の死を招くであろうと予感しながら、さういふときでも、ホレイショーは沈黙する。なぜなら、観客代表であるホレイショーは、 悲劇の主人公が死に至る過程を必然化しようとしておこなふ演戯に、口だししはならぬ ことを知っているから。
福田恒存『人間・この劇的なるもの』 〔新潮社、1956〕p.61-62
キャスト CAST
東京公演
星陵会館(TEL:03-3581-5650)
5月13日(火) 開場5:30 pm /開演6:00 pm
東京メトロ赤坂見附、永田町、国会議事堂前より徒歩5分
Pコード:385-751
武蔵野公会堂(TEL:0422-46-5121)
5月14日(水) 開場5:45 pm /開演6:30 pm
中央線・井の頭線「吉祥寺駅」 南口より徒歩2分
Pコード:385-755
仙台公演
イズミティ21 小ホール(TEL:022-375-3101)
5月15日(木) 開場5:45 pm /開演6:30 pm
仙台駅から市営地下鉄・泉中央方面行き15分、「泉中央駅」下車、北三番出口より10
http://www.bunka.city.sendai.jp/izumity21/index.html
Pコード:385-757
東京公演
京都教育文化センター(TEL:075-771-4221)
5月26日(月) 開場5:45 pm /開演6:30 pm
京阪電車「丸太町駅」5番出口より徒歩3分
Pコード:385-758
チケット:ぴあ店舗にて発売中(全席自由)
全国のファミリーマート、サークルK・サンクス、
ぴあ店舗にて販売
電話予約 0570-02-9999(Pコード:xxx-xxx *)
全国統一受付ダイヤル(公演特定可能)
http://t.pia.jp/t/
学校主催公演
大学公演主催者(大学関係者のみ)
※開場は開演の30分前
大学主催公演(関係者のみ)
※開場は全て開演の30分前/全席自由
あらすじ
デンマークの王子ハムレットは父王が変死し、2 ヶ月も経たないうち に毋(王妃)が王の弟と結婚したので鬱屈とした日々を送っている。ある晩、父王の亡霊から叔父の謀略により毒殺されたと告げられる。また、亡霊は「復讐せよ、然し心は汚すな。」と至難の業ともいえる命題を課す。亡霊の言葉の真実はつかめないものの、「腐った」デンマークを救う運命にあることを自覚したハムレットは狂人を装い、道化となることにより敵の叔父や自分をとりまく全ての人間の真実を確かめようとする。「狂人」という蓑で身を包んだ王子が、次々と放つ辛辣な諧謔の矢の数々、それは見事に相手の急所をつく。恋人オフィーリアは王子の変貌に戸惑い、嘆くのみ。
王子は、たまたま城にやってきた旅役者に毒殺のくだりを宮廷人の前で演じさせる。案の定、クローディアスは顔面蒼白になり、よろめくように立ち上がる。ハムレットの親友ホレイショーもしかと王の形相をみとどけ、二人は亡霊の言葉が偽りでなかったことを確信する。
息子の「悪ふざけ」を不審に思った毋ガートルードと対決するに至ったハムレットは容赦なく毋を弾劾し、その場に隠れていた恋人の父、宰相ポローニアスを偶然に刺してしまう。甥の「偽の狂気」を察知し、不安に駆られたクローディアスは、英国王にハムレット殺害の国書を託し王子を追放する。父を殺されたオフィーリアは狂死するが、その弔いの日ハムレットは着の身着のままで故国に舞い戻ってきたのだった..........。
この世の関節がはずれてしまった
The time is out of joint. O cursed spite
That ever I was born to set it right! ( Hamlet- I.v.215)
この世の関節がはずれてしまった。
なんの因果か,それを正すために生まれてきたとは。
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